不動産売買時の仲介手数料はなぜ高いのか、不動産業者はどんな仕事をしているのか、気になったことはありませんか?
不動産業者に仲介手数料の内訳を聞くと決まって「宅建業法で決まっているから」「国土交通省令で定められています」などと言います。
宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額について↓
国土交通省では、「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)を定め、宅建業者が宅地建物の売買・交換・貸借の代理・媒介を行って受けることができる報酬の上限額を定めています。
(引用:国土交通省の不動産流通についてのページより)
決めているのは上限の額なのですが、平気な顔をして満額を言ってくるから困ったものです。
物件価格5,000万円なら5,000万円×3%+6万円にさらに消費税を上乗せして、約170万円もの仲介手数料を支払う必要があります。
目次
売買仲介業務における不動産業者の役割
では売買時の仲介業務において、不動産業者はどのような役割を担っているのでしょうか。仲介において最低限必要な宅建士の役割と、不動産業者が取引をスムーズに進めるための役割の2つに分けて説明します。
【役割①:宅建士の役割】
- 重要事項説明
- 売買契約書作成
売買契約書の作成はイメージしやすいですが、重要事項説明はピンとこないですよね。
重要事項説明は宅建業法35条で定められている、宅建士が取引の当事者に契約の関係上、重要なことを説明する事柄になります。
契約締結前に物件およびその周辺との関係性、法令上の制限等を説明して、購入希望の物件はこんな物件ですが本当に買いますか?契約しますか?と念押しするようなイメージです。
重要事項説明に不備(説明不足)があって、買主に損害が発生した場合、主は宅建業者に責任を追及することができるので宅建業者は気合を入れて説明資料を作成します。
なお、宅建士も人間なので注意をしていてもミスをすることがあります。
そういう場合に備えた保険“宅地建物取引士賠償責任保険”というもののあります。
通常売買契約に携わる宅建業者は加入しているものと思います。
不動産業者は重要事項説明書の作成にあたり、各方面から情報収集します。
- 法務局から売買にかかわる土地・建物の登記上の情報や権利に関すること
- インフラ(電気水道ガス下水)の確認
- 県から土地の利用や建物建築の際の制限の確認
- 役所から防災、道路、周辺の計画、その地域における取り決め事項、
- その他の法令の確認
- マンションであれば修繕積立金や管理費、滞納額の確認
これだけでも結構なボリュームがありますね。
【役割②:取引上の役割】
宅建業者(宅建士)としての必須の役割は前述したとおりですが、それだけで売買が成立するわけではありません。
土地や建物を売却したいというお客様がいて、買主を見つけて、契約して、引渡して、登記してようやく取引が完了します。
場合によっては売却するまでに障害となっている事柄や物を取り除く必要があります。
例えば接道義務を満たしていない土地は建物の再建築ができませんが、近隣の土地の所有者と交渉して再建築可能な土地にしたり、また建物の立っている土地を更地にして売却する場合に建物の住民と立ち退き交渉したり、相続人が多数いて売却が困難な場合に司法書士と連携して他の相続人の承諾を得たり、取引に至るまでに様々な業務があります。
また、契約が完了後は引渡しをスムーズに行えるよう段取りします。
例えば買主がローンを組む場合は金融機関や司法書士の日程を調整して引渡し日を設定したり、所有権以外の権利の登記(例えば抵当権など)があれば、引渡しまでにきちんと抹消できるかの確認も行います。
仲介手数料ななぜ高い?
前項に書いたとおり、不動産業者のお仕事は案外ボリュームがあります。
書類を作成に関しても時間がかかることは容易に想像できると思います。
また責任ある立場で仕事しています。
なので取引における不動産業者の経費は
- 書類の作成にかかる人件費
- 各方面との調整にかかる人件費
- 広告費
- 損害賠償責任の対応
などから構成されているものと予想されます。
なので仲介手数料がある程度高額でないと不動産業者の経営が厳しいというわけなのでしょう。
ここで気になるのは宅建士の報酬の上限。
- 二百万円以下の金額:百分の五・五
- 二百万円を超え四百万円以下の金額:百分の四・四
- 四百万円を超える金額:百分の三・三
(引用:昭和45年建設省告示第1552号(pdf形式)より)
これを売買代金別に表にすると次のとおり。
売買代金(税別) | 報酬(税込(税率10%)) |
50万円 | 27,500円 |
100万円 | 55,000円 |
200万円 | 110,000円 |
400万円 | 110,000円+88,000円=198,000円 |
1000万円 | 110,000円+88,000円+198,000円=396,000円 |
5000万円 | 110,000円+88,000円+1,518,000円=1,716,000円 |
1億円 | 110,000円+88,000円+3,168,000円=3,366,000円 |
5億円 | 110,000円+88,000円+16,398,000円=16,566,000円 |
売買代金が1億円を超えてくると地方サラリーマンの年収を超えてきます。
売買代金が400万円以下ならそれほど気になりませんが、売買代金が数千万円~数億円になると高く感じてしまいます。
さて、不動産業者の仕事の話に戻りましょう。
書類作成にかかる人件費や広告費は物件の大小に関わらず固定的にかかるので、不動産業者は物件価格の大きな取引を好みます。
小さな仕事を数こなすよりも大きな仕事を一つ請けた方がかかった経費に対して得られる報酬は多いということが想像できます。
ですが実際には顧客の信用を得るため、継続して取引してもらうために、物件価格の大小に関わらず仕事を引き受けていることでしょう。
物件価格の大きな取引を見れば仲介手数料は高い!となりますが、小さな細々とした取引も引き受けているとしたらしょうがないんじゃないかな~と思ったりもします。
ですが、その辺は不動産業者の都合であって、我々消費者は仲介手数料は安い方がいいに決まっています。
ある程度物件価格の高い取引の場合は積極的に仲介手数料の減額交渉をした方がいいかもしれません。
どうしても仲介手数料を払いたくない場合
個人間取引をしましょう。
不動産業者が行っている重要事項説明に準じて調査を行えばトラブル軽減につながります。
ただし、通常は不動産業者の広告で物件情報は入手することになるのでかなり難易度は高いかもしれません。
良い物件なら迷わず仲介手数料を払ってでも購入した方が吉だと個人的に思います。
私が直接売主から購入した例↓
売主が信用できる相手でしたので個人間取引をさせていただきました。
見知らぬ相手からの購入なら不動産業者を通さないと怖いですよね。
おわりに
令和2年10月に国土交通省から発表された宅地建物取引業者数の状況によれば、令和2年3月末時点の全国の業者数は125,638とのこと。
6年連続の増加とのことで、かなりの数に上ることが分かります。
これだけの宅建業者が登録されているということはそれなりに稼ぐことのできる業界だということでしょうか。
一回の取引で数百万、場合によっては数千万も収入が得られるなら参入してくる新規業者も多いはずです。
高い仲介手数料が不動産業者の雇用を守っていることは容易に想像できます。
雇用の安定化を考えると仲介手数料の安易な引き下げは回避すべきですが、一個人としてはもう少し安くなってくれればな、と思います。