賃貸住宅の大規模(長期)修繕積立金の損金算入制度はいつから始まる?内容や注意点について

『賃貸住宅の大規模修繕積立金の損金算入制度(全国賃貸住宅修繕共済協同組合による共済掛金制度)』の準備が進んでいるようです。

この制度では、大規模修繕時にかかる資金をあらかじめ共済掛金として預け入れることにより修繕積立金の経費計上が可能となり、修繕にかかる資金を計画的に事前準備することができます。

この記事ではこの制度の具体的内容やいつから始まるのか、注意点や掛け金の上限などについて紹介していきます。

まとめ

長期修繕計画の作成が必要

修繕対象は外壁・屋根

開始時期は未定

掛け金の上限も不明

この記事を作成した2022年1月13日時点では未定・不明な部分が多いですが、情報が入り次第、記事を修正していきます。

修繕積立金を経費化できるメリット

賃貸住宅の大規模修繕積立金の損金算入制度(全国賃貸住宅修繕共済協同組合の共済掛金制度)により、賃貸住宅の修繕積立金を共済掛金として事前に計上することで経費として算入することができます

個人経営のアパート等の場合、大規模修繕が発生すると単年で大幅赤字に陥ってしまったり、大規模修繕をしたくても修繕に充てられる資金がなかった、などという話を聞くことがあります。

資金に問題がなく修繕を実施しても単年で赤字になり、他の収益物件取得時の融資付けに悪影響が出ることもあります。

また、大規模修繕を実施しない、または先延ばしするリスクは以下のとおり。

  • 外観の劣化による周辺物件との競合力低下(家賃低下)
  • 雨漏り発生の可能性が高まる(シーリング劣化や亀裂の発生)
  • 金属部分の劣化が進む
  • 大規模修繕を先延ばしすると劣化の進行具合によっては修繕費がかさむ

雨漏りが発生すると建物内部の設備や入居者の所有物に損害を与えることがあります。また、RC建築物ではコンクリート内部に配筋されている鉄筋がサビて膨張し、コンクリートを破壊(爆裂)することがあります。

階段や屋上の手すりや配管等が金属製の場合、サビが進行して脱落&落下の原因になります。

長く安定してアパート等を適切に管理するためには大規模修繕は必ず実施しなければなりません。

『賃貸住宅の大規模修繕積立金の損金算入制度』の内容や注意点は?

制度の内容

制度の利用方法

全国賃貸住宅修繕共済協同組合の共済商品で、共済の掛金とすることで全額損金として認められます。

【全国賃貸住宅修繕共済協同組合について】

  • 全国賃貸管理ビジネス協会
  • 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会
  • 公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会

の3団体により立ち上げられました。

所在地:東京都中央区八重洲1丁目3番7号八重洲ファーストフィナンシャルビル

対象となる修繕

「外壁」および「屋根」のみ

現時点では「屋根」と「外壁」の修繕が対象となっていますが、対象範囲の拡大もありえるとのこと。

住宅新報によれば、「水回りなど内装設備の工事費も含めるよう対象範囲の拡大要望が出されている」という問い対し、自由民主党賃貸住宅対策議員連盟(ちんたい議連)の石破茂会長は以下のように答えたとのこと。

「なるべく早く実現するよう努力したい。物件オーナーは手元資金があまりない方も多いので、経費と認められれば賃貸住宅の質的レベルアップにつながる(引用:住宅新報2022年1月11日号)。」

実現が楽しみですね

たてものくん

また、全国賃貸住宅経営者政治連盟(ちんたい政連)は大規模修繕に付随する設備(エレベーター、受水槽、給排水設備等)や水回り設備、内装設備(エアコン、給湯器等)も対象とするよう求めた(引用:不動産ニュース2021年11月16日)ので、これが実現すればかなり使い勝手のよい制度になりそうです。

制度を利用するための注意点

長期修繕計画の提出が必要であることに注意。

将来発生すると予想される修繕の内容や時期、費用を盛り込んだ長期修繕計画を求めれます。

具体的な費用の見積もりは専門業者にお願いしなければなりませんが、目安としては民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック(国土交通省発行、pdf)が役に立ちます。

また、本サイトの過去記事に屋上防水塗装工事や原状回復の費用を記した記事がありますので、よかったらご覧ください。

アパート屋上の遮熱防水塗装工事の相場は?実際の見積もりから分かったこと

アパート退去時の修繕費の目安はいくら?減額方法についても解説(2DK&築古RC物件)

【本・サイト紹介】アパート長期修繕計画作成の参考になるおすすめ書籍など

『賃貸住宅の大規模修繕積立金の損金算入制度』はいつから始まるのか?

『賃貸住宅の大規模修繕積立金の損金算入制度』がいつから始まるのかは現時点では未定です。

この共済制度は2021年10月8日に国土交通省から認可されたとの報告もありますし、全国賃貸住宅修繕共済協同組合のウェブサイトも着々と準備を進めているようです。

2022年中には実現するかもしれません。

『賃貸住宅の大規模修繕積立金の損金算入制度』の掛け金上限はいくらか?

『賃貸住宅の大規模修繕積立金の損金算入制度』の掛け金の上限は現時点では不明です。

大規模修繕費は賃貸住宅の規模(例えば建築面積や階数)により概算できるので、規模応じて掛け金の上限が設定されるのでは?と予想されますが、実際にどのようになるのかは不明です。

長期修繕計画で計上した費用と実際に発生した費用に差異があった場合の取り扱いがどうなかも気になります。

差異があれば節税ではなく脱税になってしまう恐れがありますし、この辺の調整方法は簡単なものであって欲しいです。

おわりに

私個人としてはこの制度に非常に期待しています。

大規模修繕はもちろんのこと、原状回復においても単年で大きな出費を伴うことがあり、その年の決算書の内容が悪くなります。

事業規模拡大を目指した場合、赤字経営は好ましくありません。

損益が安定化すれば青色申告特別控除(65万円控除)も最大限利用でき、節税につながりますし所得税や住民税の支払額も安定するので毎年の資金計画が立てやすくなりますね。

『賃貸住宅の大規模修繕積立金の損金算入制度』の具体的な内容の公表を待ち遠しく思っています。

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